オーロラのカーテンをめくる

きままにひとりごと

高嶺の花は美しく逞しい幻 〜白馬高山植物園へ行った日記

すっかり秋が深まりつつある時期になってしまいましたが、夏の備忘録をここに記します。
7月某日、同じ職場のひとと長野県の白馬五竜高山植物園へ行って来ました。初めての白馬、ダイナミックかつ爽やかな自然に囲まれてとても良いところでした!

こちらの標高は1515m、エイブル白馬五竜アルプス平に広がる、日本でも有数の高山植物が見られる場所です。
高山植物のシーズンは夏から秋ですが、種類によっては本当に短期間でしか見れない植物も多く、鑑賞するチャンスが限られています。
高山植物」というピンポイントな植物園に行ってみたいなあと思い始めて数年。初夏が近づいてくるとそわそわしながら機会を伺っていたのですが、なかなか行ける距離感ではないのでハードルが高かった…。
しかしながら、ありがたいことに同行者が見つかり、今年無事に向かうことが出来ました。わーい!

天気にも恵まれていた当日。
車で麓までやって来ました。からのゴンドラ「テレキャビン」に乗りこみます。ゴンドラに揺られること約8分で山頂エリアに到着。ぐんぐん地上が遠ざかっていく感覚が面白かった。しかし途中で止まったらパニックになりそうだな…。

終点!
駅(?)から降りてすぐにアルプス平広場が広がっていて、「おお〜」と声が出た。
ここが植物園の入り口なのですが、なんかもう、すでに世界観に入ってる状態である…。大きな楽器を演奏している方がおり、その音色が本当にジブリのようでテンションがあがった。ハウルのあの野原みたいな。

私と同行者はまず、アルプス展望リフトに乗って植物園の上を目指しました。こちらですとーんと頂上まで行き、ゆっくり歩いて降りてきながら鑑賞するという算段です。

夢か?というくらいのんびりしたそよ風に当たりながらのリフト移動。天気は良いけど風が涼しい。わ〜と歓声をあげながら辺りを眺めていると、アルプス平自然遊歩道に到着。さあ、こちらから散策を開始します。
この遊歩道は五竜岳への登山道の一部でもあるそう。順路を外れた方面に、打って変わって何やら険しい道のりが続いていたので、そのルートが登山道らしかった。

順路はthe・ハイキングコースという感じで、初心者にとってはいい運動になる。

さあっと目の前に広がる壮大な景色。一気に開けた気分になる!
もちろん植物園なので、道中にも植物がぽつりぽつりと顔を出すように咲いていた。遠い山の景色の壮大さと、足元のささやかな花の対比がそれぞれの良さを際立たせている。

しばらく歩くと「地蔵の頭」に到着。ハイキング中のみなさんはここでひと休みされていた。老若男女問わず様々な年代のみなさんが景色を眺めている様子は一体感があってとても良かった。
なぜなら北アルプスをぐるりと一望できるのだ。この雄大さが醸す感動を共有できる喜び。
となりの山の荒々しいほどの山肌がすごい。迫ってくるみたいな力強さ。正直、私はほぼ乗り物に乗ってここまで来たので苦労して手に入れた眺めではないが、それでも感慨深い気持ちにさえなる。

その後、また順路を歩いていくと、「地蔵の沼」が現れる。なぜか肝心の沼の写真は撮れていないけど、道のりはこのような感じでした。

ゆっくり空気感を味わいながら楽しむと同時に、吸い込まれるようにどんどん奥へ奥へと進んでしまう。



ふと横を見ると、あたり一面にニッコウキスゲが広がっていた。ぱーっと明るい気持ちになる色です。
こちらは野生のユリの仲間で、群生している姿は見ごたえがある。けれど、ニッコウキスゲは一日花と呼ばれ、なんと花は一日でしぼんでしまうらしい。こんなに見事に、色鮮やかなオレンジ色に美しく咲いているのにたった一日で!?儚すぎるのだが…。
この儚さが高山植物…と括らずとも、植物の魅力なのだろうが、惜しさを感じる。貴重な開花を目撃できたことが心から嬉しい。


道なりにゆるやかに降っていくと、白馬連峰高山植物生態園エリアに出る。こちらは標高や環境に応じた植物群落を再現し、自生地らしい姿で観察が出来るエリアとのこと。ややゴツゴツとした岩肌があり登山している気分になれる。
こちらでは高山植物の女王・コマクサやチングルマが見られた。

コマクサはピンク色も相まって可愛らしいけれど、寒く厳しい環境下で花が咲くまでにとても時間がかかるらしい。ゴツゴツした岩の上を楚々と、かつ鮮やかに染める姿に胸が締め付けられるようにきゅんとする。

こちらはタカネナデシコ

ナデシコはいろんなところで分布しているけれど、この種が最も高山帯で咲き、また、濃い色をしているらしい。存在感あります。

ちょうど蝶がとまっていたクガイソウ

青紫の色味がきれい。しかし不思議で面白いかたちをしているなあ。漢字では「九階草」と書くらしく、名の通り九段ではないけれど、草がたくさんの段つけている。

辺りにぱあっと広がる群生、チングルマの種。こちらはなんとバラ科なのである。

漢字で書くと「稚児車」。雪のような綿毛がふわふわと風になびく姿は愛らしいが、そのたたずまいと一面に広がる様子は圧巻。

ササユリ。なんとも上品です。

野生のユリだけれど、この楚々として、瑞々しく、優しくて淡い姿はぱっと視線を捉えて離さない。誰だって見惚れること間違いなし。うん、ユリはいいぞ。

ヒマラヤの青いケシ。


7月頃がピークで植物園の目玉でもある青いケシ。ちょうど見頃に立ち会えてよかった。
やはり透き通るような青色が美しい…!暑さに弱く一定の標高以上の高地にしか自生しないため、「幻の花」と呼ばれているそうな。そして花言葉は「底知れぬ魅力をたたえます」。なるほど、すごくぴったりです。
美しいが危険、というのは胸にくるものがあります。
そう、ケシといえば、金カムの鶴見中尉がしょってるイメージですね。あへん…。


これにて植物園のゴールに到着。お疲れ様でした。ほどよいハイキングコースで色んな年代の方がおられました。日頃運動不足な私にはちょうど良いキツさでした。
写真であげた以外にも他にたくさんの高山植物を見られました。名前がわからなかったり、シーズン過ぎてしまった植物もいたけれど…。すごく満足!

その後、親海湿原や姫川源流まで足を伸ばして白馬の自然を堪能しました。湿地に浮かぶ力強くも淡い緑が眩しい。こちらの景色も非常に素晴らしかった。

白馬山、なかなか足を運べる距離ではないのと、時期的な問題もあるのでタイミングが合って行くことができて良かった。
高山植物に興味ある」と発言して、それに乗っかって誘ってくれた同行者に心からの感謝である。おかげでいい経験になりました。

「高山」植物園として成り立っている場所はあまりない。なので、あとは自分で実際に登山して、ガチの野生の植物たちに出会うしかない…のですが、このときめきのためにも来年は登山に挑戦していこうと思う。運動音痴なのだが…。
しかし興味の幅、チャレンジの幅が広がる感覚にわくわくする!声に出して実践していくこと大事だなあ。
と、思わせてくれる高山植物たちでした。

高山植物、知れば知るほど愛おしく厳かな感情が芽生えます。ぜひ出会ってみてください。